研究概要 |
本研究は、高強度金合金を開発するための基礎資料を得ることを目的として行った。パラジウムの含有量を10,20,30,40,50%の5水準に、銅を10,20,30,40%の4水準に変え、残量を金とする20種類のAu-Pd-Cu三元合金をアルゴン雰囲気内で溶製した。これらの合金の融点・硬さ・変色・X線回折・比重測定を行った結果、次のことが明らかとなった。 1)実験合金の液相点は、1035℃から1388℃までの範囲にあり、銅含有量の少ないほど、パラジウム含有量の多いほど、液相点が高くなった。歯科鋳造用合金としては液相点が高く、第4・第5の元素を添加して合金の融点を下げる必要がある。 2)実験合金の変色試験後の明度L^*は銅を20〜30%含む合金で最大の明度を示し、変色試験前後の明度差ΔL^*は銅の添加量が多くなるほど大きくなった。しかし、as cast時・軟化処理時・硬化処理時の変色試験後のL^*は常に70以上を示し実験合金の耐変色性は良好である。 3)実験合金の硬さHvは、as cast時63.2〜319・軟化処理時74.4〜197・硬化処理時74.7〜291である。1/3Hvが引張強さであるという説を引用すれば、高いHvの実験合金では引張強さも高いと推定される。実験合金の範囲内で高強度金合金の組成を推定すると、50〜70Au-20〜30Cu-10〜30Pdの組成となる。 4)実験合金の比重測定から、パラジウムを50%添加した合金と銅を10%添加した合金に鋳造欠陥の発生量が多いことが示唆される。 5)X線回折の結果から、実験合金を硬化させたのは、Aucu,PdCu規則格子生成に基づくと判断した。
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