研究概要 |
1)サル顎関節における関節腔内,鏡視下手術後の形態変化 日本ザル3頭6顎関節の3か月,6か月,12か月の経過観察から術直後の軽度〜中等度の外傷性変化が手術創以外の部分にもみられる。次いで経時的にそれらが瘢痕化を示とともに同部を中心とした線維性癒着部の増加が拡がり,まず滑膜部に於いては滑膜間の癒着が発現,さらに滑膜と関節結節,下顎窩表面の軟骨,そして関節円板へと拡大し最終的に腔の狭窄化が見られた。 しかしその後の機能的変化は,とくに開口域の減少,開閉口運動の障害は見られず通常に経過して観察された。その理由として一般に動物実験では患部の疼痛をはるかにしのぐ動物の旺盛な食物摂取により,結果的に開閉口の術後運動が積極的に行われそのため下顎運動障害が後遺しにくいものと考えられた。 2)臨床例における鏡視下手術施行例の検索 27症例36顎関節についての術前および術後の全症例のCT二重造影像の所見から関節腔内形態の変化は動物実験の結果にほぼ準ずるもので,関節腔狭窄を示すことが観察された。とくに外傷性損傷,線維性癒着などの病変が広範囲の症例では関節狭窄から閉鎖となる場合が多いことが明らかとなった。この病態は関節腔滑膜の瘢痕化から線維症,線維性癒着症,さらに滑膜の伸展性の低下,病変部の拡大によりいわゆる線維性強直症に至る症例が多数観察された。またこれらの病態は顎関節運動機能が抑制状態で増大傾向を示し,さらに最終的には骨性の顎関節強直症に進行するものと考えられる。しかしながら術後の開閉口運動への訓練が適切であれば,機能障害,開口制限はみられないことがわれわれの多数症例にもとずく臨床経験からも得られており,鏡視下手術後の機能訓練の重要性が強調される結果であった。
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