研究概要 |
1.オカダ酸(セリン・スレオニンフォスファターゼ1,2A阻害剤)をF9細胞に作用させると細胞は著しい形態変化を起こすと共に細胞周期のM期にて停止した。その際、分化マーカーであるplasminogen activatorの産生を認めた。さらに、Northern blotでplasminogen activator、laminin B1、jun関連遺伝子群(c-jun、junB)の発現を認め、CATアッセイにて、AP-1の活性化がTRE(TPA-responsive element)を介するものであることが判明した。これらのことから、オカダ酸によるフォスファターゼ阻害が蛋白質のリン酸化の見掛け上の活性化を惹き起こし、AP-1の活性化を介してF9細胞の分化マーカー遺伝子の発現を誘導したと考えられた。[Exp.Cell Res.,217(1995)in press] 2.F9細胞に、抗癌剤であるシスプラチン(CDDP)を作用させることによりplasminogen activator、laminin B1、c-junの発現を認め、アポトーシスに至る前に、分化が誘導された。さらに、in vitroでCDDPを作用させたF9細胞は90%以上生存しているにも関わらず、マウスに接触しても腫瘍形成能は消失していた。すなわち、CDDPのF9細胞に対する抗腫瘍作用には、分化誘導も関与していることが明らかとなった。[Cancer letters,88,81-86(1995)]
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