研究概要 |
本研究では,歯の形成に関与した歯堤上皮やエナメル上皮,Hertwig上皮鞘の生理的消失にapoptosisが関与し,ヒト歯原性襄胞の成因となる歯原性上皮成分の顎骨内残存がapoptosisの発現異常によるものとの仮説に基づき,種々の歯原性上皮についてapoptosis関連抗原であるLe^y抗原の発現とTUNEL法によるDNA fragmentationの証明をapoptosisの指標として,また増殖細胞核抗原であるPCNAおよびMIB-1(Ki-67)の発現を免疫組織化学的に検索し、歯原性上皮の増殖と細胞死との相関について検討した。その結果,ヒト歯胚,エナメル器の発育過程にみられた歯原性上皮では、エナメル器の完成した鐘状期歯胚の総歯堤上皮や不規則に増殖した外エナメル上皮にLe^y抗原の発現やDNA fragmentationが認められた。一方,Malassezの上皮遺残はいずれもLe^y抗原の発現RDNAtragmentationを示唆する所見は得られなかった。さらに,歯根肉芽腫内の網状増殖上皮にはLe^y抗原の発現やDNA fragmentationは認められなかったが,歯根襄胞へ移行する上皮あるいは歯根襄胞壁上皮では,棘細胞化を呈する中間層から襄胞内腔側の全ての上皮細胞膜にLe^y抗原の発現,DNA fragmentationが認められた。また,歯根襄胞壁上皮の基底層に沿ってPCNA,MIB-1陽性細胞が多数認められた。一方,歯原性角化襄胞の発生原因と考えられる襄胞壁結合組織内にみられた上皮胞巣や襄胞壁上皮は,表層の錯角化上皮を除いてLe^y抗原の発現およびDNA fragmentationを示唆する所見は認められなかった。以上の結果から,歯の発育が進み不必要となった歯堤上皮やエナメル上皮はapoptosisが誘導されて消失する可能性が示唆される一方,何らかの原因でこの消失メカニズムに抑制が生じ顎骨内に残存した歯原性上皮が歯原性襄胞の発生原因となることが示唆された。
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