研究概要 |
本研究は、歯の移動に伴い歯周組織のどの細胞でosteocalcin、osteopontin、osteonectin、アルカリフォスファターゼ、酸性フォスファターゼ等の遺伝子が発現しているかを調べることにより、歯の移動、歯根吸収のメカニズムを分子レベルで解明することを目的としている。 平成6年度には、7週齢Wistar系ラットの上顎第一白歯と第二臼歯の歯間部に矯正用ゴムを挿入し,実験的歯の移動をWaldo法により行い、経時的にラットを屠殺し、顎骨を採りだして、脱灰後、パラフィン包埋をして、組織切片を作成した。アルカリフォスファターゼ、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ、osteocalcin、osteonectin、osteopontinのcDNAを用いてDigoxigenin-11-UTP標識cRNAプローブを作成し、これらを用いてin situハイブリダイゼーションを行った。組織顕微鏡により,歯の移動に伴う圧迫側と牽引側の歯根膜、歯槽中隔の皮質骨および海綿骨、象牙質およびセメント質の形成および歯根吸収像を観察し,アルカリフォスファターゼ,酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼおよび骨基質蛋白の遺伝子発現の、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、セメント芽細胞、セメント細胞、象牙芽細胞、破歯細胞等における、細胞局在を調べた.特に各遺伝子の発現について、歯根膜の非特異的なシグナル発現を生じないハイブリダイゼイション条件を見いだすことに努力した。以上の結果、歯の移動によって骨のリモデリングが亢進し、骨芽細胞、破骨細胞、破歯細胞が多量に出現してくる時期に、非コラーゲン性骨基質蛋白やアルカリフォスファターゼ、酸性フォスファターゼの遺伝子が特異的にこれらの細胞に発現することを見いだした。一部の知見を本年度はJ Histochemistry Cytochemistryに論文投稿し、印刷された。現在は、いまだ、ほとんど解明されていない歯根形成にともなう細胞性セメント質および無細胞性セメント質形成に関連した歯根膜細胞の役割やセメント形成性細胞の分化における、これらの骨基質蛋白や酵素の新たな機能および役割について、さらなる研究成果を論文にもとめている。
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