研究概要 |
有機質に富む歯根面は歯冠面に較べ、吸着する唾液蛋白質が異なる可能性が考えられた。実験では、抜去歯(歯冠面,歯根面)および合成ハイドロキシアパタイトを唾液に浸潰し、唾液蛋白質を吸着させた。サンプルバッファを用いて直接回収したサンプルを直ちにSDS-PAGEにかけ、泳動ゲルは銀染色した。顎・舌下線唾液では分子量約300,180から145,86,60,59,55,43キロダルトンの蛋白質バンドを認めた。根面吸着蛋白質は、主に180から145キロダルトンであった。歯冠面,歯根面あるいは合成ハイドロキシアパタイトの回収サンプルの泳動パターンに大きな違いは認められなかった。つぎに、全唾液では分子量300〜200,86,66,60,55キロダルトンの蛋白質バンドを認めた。電気泳動分析時、顎、舌下線唾液と較べ、全唾液では分離ゲル内に入らない物質が多量に認められた。硬組織を全唾液へ浸漬後、吸着蛋白質の回収を試みたが、バンドを検出できなかった。全唾液では硬組織表面に吸着し易い蛋白質が、凝集に巻き込まれて減少し、硬組織に吸着出来なかったと推測された。主な吸着蛋白質はStreptococcus mutansよりもStreptococcus Sanguisの吸着をより促進した。等電点電気泳動の結果は歯面吸着蛋白質を含む高分子量蛋白質はpI5付近の等電点を持つことを示唆した。我々が研究を進めてきた付着促進蛋白質(APPと略す)はS、nutans付着促進活性は極めて高いが、唾液含有量が少ないためか今回は検出できなかった。APPのアミノ酸組成はセリン、グリシン、グルタミン類が主で、この三つで全アミノ酸の約40%を占めていた。アミノ酸シークエンスについても検討を行っているが、N末端の閉鎖が示唆され、まだ結果を得るに至っていない。
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