研究概要 |
小児歯科治療に対する患児のストレス反応をサーモグラフィーを用いて数量的把握を行った。対象は,5歳から11歳までの心身共に健常な小児患者20名とした。各被験者の小児歯科治療の経過に伴い,手背皮膚温をフロッピ-ディスクに記録し,温度分析を行った。その結果,小児への歯科治療の侵襲の程度により,サーモグラフィーで小児のストレス反応を数量的に把握することが可能であることが判明した。また,非接触的かつ身体的制限がなく計測できるサーモグラフィーは,小児に対して有効な方法であることが認められた。 小児歯科治療時において,母親が術者に及ぼす心理的ストレス反応尺度を試作し,信頼性と妥当性の両面より検討を行った。対象は,本学小児歯科学講座に在籍する歯科医師22名である。ストレス概念の構成要素に基づいて,質問文を5項目ずつ12組のアンケートを作成し,術者に回答させ数量化した。そして,因子分析を行い7因子,20項目が抽出し,母親が術者に及ぼす心理的ストレス反応尺度を作成した。信頼性は,Cronbachのα係数を用いた内的一貫性と経時的安定性の両面より検討を行った。妥当性については,日常生活における心理的ストレス反応尺度(PSRS)との比較検討をした。PSRSの回答結果の合計得点により高ストレス群と低ストレス群に分け,各群に対応する母親が術者に及ぼす心理的ストレスの得点を求めた。その結果,十分な信頼性と妥当性が認められた。また,術者から母親への対応技術向上のための行動科学的トレーニングの有効性について自信度の面より検討した。本学小児歯科学講座に在籍する歯科医師13名(対照群7名,トレーニング群6名)を対象に,「母親への対応における自信度調査アンケート」を用いてトレーニングの評価を行った。その結果,トレーニング群における自信度が対照群に比し有意に上昇し,行動科学的トレーニングの有効性が認められた。
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