研究概要 |
当研究は口臭評価を歯科健診に導入することを目的に,スクリーニングレベルを決定するために必要な集団の口臭特性を調査,分析した。ポ-タブル口臭測定器(ハリメーター)を用い,18歳〜64歳の一般健常者2,672名(第1回調査)および35歳〜60歳の201名(第2回調査)を選び調査を行った。唾液の分析項目は刺激唾液流出量,pH,唾液中のヘモグロビン含有濃度の測定であり,口腔診査項目は,舌苔量の評価と歯周健康状態については現存する全歯牙周囲を対象にプロービング後の歯肉出血,歯周ポケットの深さ,上皮付着位置の喪失量(アタッチメントロス)を評価した。臨床診査に先立って,各被検査に何らかの疾患があるならばその疾患名,あるいは全身健康状態,および常用薬の種類,服用頻度,量を問診した。併せて,口臭の自覚についても尋ねた。全身疾患や薬剤の服用などによる調査不適格者を除いた結果は,1)口臭原因物質である揮発性硫化物濃度と口臭の自己評価とはなんら関連が認められなかった。2)揮発性硫化物濃度には男女間で,また年齢グループ間で有意差がなかった。3)刺激唾液流出量の多少が揮発性硫化物濃度の高低に影響を与えなかった。4)唾液pHと揮発性硫化物濃度には関連が認められなかった。5)舌苔量は揮発性硫化物濃度と強い相関を示した。6)歯周疾患のパラメーターとしてのヘモグロビン唾液含有濃度や一人平均歯周ポケットの深さなどは口腔内気体中の揮発性硫化物濃度のレベルに反映されなかったが,6mm以上の歯周ポケットの深さ呈すを部位数および6mm以上のアタッチメントロスを呈す部位数と揮発性硫化物濃度のレベルには有意な相関関係が認められた。このことは,単に歯周疾患に罹患しているかどうかよりも活動性の病態を示す体積が問題であることを示唆している。また,硫化物濃度75ppbを社会的容認限度と規定することで,口臭スクリーニングを行うことの可能性を認めた。
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