研究概要 |
本研究では摂食姿勢(体幹および頭頚部)を変えることによって安静時に摂食時における呼吸曲線,呼吸リズム、血中酸素飽和度(SpO_2),脈拍数がどのように影響を受けるかについて検討をおこなった。以下姿勢については体幹10°頚部前屈位を10/ANT,体幹45°頚部前屈位を45/ANTとした。 健常者群では安静時ではきわめてリズミカルで安定した呼吸曲線が常に認められただけでなく呼吸曲線の波形の個体差もあまり認められなかった。嚥下時においても嚥下に伴う一時的な小呼吸(嚥下呼吸)を除けばきわめて安定した呼吸曲線が得られた。これに対して障害者群では安静時の呼吸曲線でさせ不安定なリズムを示す割合が多く,安定したリズムが得られた場合でも呼吸曲線の波形や振幅が同一個体であっても姿勢の違いや測定日が異なると,いくつかのパターンが認められた。嚥下時においては健常者に認められるような明確な嚥下呼吸ではなく、むしろ呼吸停止する傾向がみとめられた。また姿勢変化と呼吸曲線との関連では健常者では10/ANTの方が35/ANTよりも1回の呼吸時間が統計学的に有意に長くなったが,障害者では3例中2例ではむしろ45/ANTの方が10/ANTよりも長くなる傾向が認められた。 安静時における姿勢とSpO_2との関連性は認められなかったが,嚥下時においては10/ANTよりも45/ANTの方がSpO_2値は小さい傾向が認められた。健常者および症例OSでは安静時,嚥下時共に10/ANTに比べて45/ANTの方が脈拍数は多くなる傾向がみとめられた。 以上のように健常者群においては安静時および嚥下時の呼吸曲線やSpO_2,脈拍数と姿勢との間に一定の規則性を認めることができたが,障害者群では同一症例であっても1回目と2回目の測定で結果が異なることもあり評価がきわめて難しかった。今後さらに多くの症例について検討を進める必要があるが,その際には同一症例について最低2回以上の測定を行う必要があり,また呼吸曲線の測定では脳郭センサーと鼻センサーの両側面からの検討が大切であろう。
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