研究概要 |
本研究は,健常児や発達障害者がどのような場合に歯科診療に適応できるのか,そのレディネスを予測できる要因を明らかにすることを目的とした。対象は,1歳1カ月から6歳11カ月までの健常児124名と運動障害や視聴覚障害を伴わない発達障害者103名であった。方法は,まず健常児に歯科手技シミュレーションを行い,その適応行動を観察し,歯科診療へのレディネスを予測できる要因として,暦年齢,発達年齢(遠城寺式乳幼児分析的発達検査),性別,歯科治療経験(受診期間,治療回数,行動管理方法の種類)などから適切な項目を統計的に検索し,その要因の適応・不適応の判別点を検討した。次に,発達障害者についても同様の調査分析を行い,歯科診療へのレディネスを予測できる要因を検索し,適応・不適応の判別点を検討した。さらに,健常児と発達障害者との間で,これらの要因にどのような関連があるのかを検討した。 結果:1.健常児の歯科診療に対するレディネスを予測する最も良い要因は,暦年齢と発達年齢であり,発達障害者も発達年齢が最も良い要因であった。臨床において、健常児では簡便性のため暦年齢が有用であり,発達障害者では発達検査の基本的習慣の項目が最も有用であると考えられた。2.歯科診療へのレディネスを予測する要因の適応・不適応の判別点は,健常児が暦年齢の3歳0カ月であり,発達障害者が発達年齢の基本的習慣の3齢10カ月であった。3.健常児の判別発達年齢を基準に,発達障害者の適応状態の一致度を求めると,発達年齢(基本的習慣)では約80%一致した。4.健常児や発達障害者に対して歯科診療を行う際には,前者では暦年齢を知ることが重要であり,後者では発達年齢(基本的習慣)を知ることが重要である。これにより,歯科診療に対するレディネスを予測することが可能であることが明らかとなった。
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