研究課題/領域番号 |
06672110
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
化学系薬学
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研究機関 | 共立薬科大学 |
研究代表者 |
望月 正隆 共立薬科大学, 薬学部, 教授 (10072414)
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研究分担者 |
稲見 圭子 共立薬科大学, 薬学部, 副手
堤 のぞみ 共立薬科大学, 薬学部, 助手 (00255382)
石川 さと子 共立薬科大学, 薬学部, 助手 (70223518)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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キーワード | 環境内化学発がん物質 / N-ニトロソジアルキルアミン / シトクロムP450 / 化学モデル系 / 金属ポルフィリン / 代謝活性化 / 突然変異原性 / 不安定代謝中間体 |
研究概要 |
環境内化学発がん物質であるN-ニトロソジアルキルアミンは、生体内酵素であるシトクロムP450により代謝活性化を受けて発がん性および突然変異原性を発現する。代謝活性化の第一段階としてP450によるα位炭素の水酸化反応が重要であるが、このα-水酸化体に至るまでの詳細な分子機構については未だ不明な点が多い。本研究では、N-ニトロソジアルキルアミンの代謝機構の検討にシトクロムP450の化学モデル系を応用することを目的とした。 金属ポルフィリン/酸化剤モデル系においてN-ニトロソジアルキルアミンが酸化的分解を受け、代謝産物としてアルデヒド、アルコール、および亜硝酸/硝酸イオンを生成することを確認した。この結果、モデル系においても酵素系と同様、代謝活性化経路であるα-水酸化に基づく脱アルキル化、および解毒経路として知られる脱ニトロソ化の二つのP450様の反応が進行することが明らかとなった。また、モデル系の反応ではN-ニトロソジアルキルアミンへ酸化される経路も認めた。さらに、モデル系の存在下、N-ニトロソジアルキルアミン(アルキル=プロピル、ブチル)のSalmonella typhimurium TA1535株に対する突然変異原性を検出した。また、アルキル化剤に感受性の高いSalmonella typhimurium YG7108株を用いることにより、N-ニトロソジアルキルアミン(アルキル=メチル、エチル、プロピル、ブチル)の変異原性を効果的に検出することができ、モデル系においてN-ニトロソジアルキルアミンの代謝活性化が進行していることを明確に示した。モデル系を用いて不安定反応中間体の捕捉を試みたところ、N-ニトロソジアルキルアミン由来の炭素ラジカル種の生成をESR測定により認めた。このことから、N-ニトロソジアルキルアミンのα-水酸化として、水素引き抜き反応により生じるα位炭素ラジカルをもつニトロサミンを中間体としている機構を推定した。 シトクロムP450の化学モデル系は、酵素非存在下におけるN-ニトロソジアルキルアミンの代謝活性化を可能にした。モデル系はタンパク質が存在しないため、不安定代謝中間体の捕捉、微量代謝物の単離同定が可能となり、化学的手法に基づいた反応機構の検討に有用である。実験動物を用いない純粋な化学触媒系であるシトクロムP450モデル系は、様々な化学物質への応用が期待できる。
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