研究概要 |
近年、微生物や海洋生物から複雑な鎖状ポリオール構造を持つ生理活性物質が、単離構造決定されている。しかし、生物活性と密接に関連する立体構造については、ほとんど未解決のままである。本研究では、「相対配置を決めることなく絶対配置を決定する」という研究命題を掲げ、我々が既に考案したCD差スペクトル法が、末端に1,2-ジオール構造を持つ鎖状1,2,4,6...ポリオールの直接的な絶対配置決定にも有効であるかどうかを検討した。 1.光学活性ポリオール化合物の合成 光学活性ブタン-1,2,4-トリオールを出発原料にして6-ヘプテン-1,2,4-トリオールの光学異性体4種、ヘキサン-1,2,4,6-テトラオールの光学異性体およびそれらの誘導体8種を合成した。さらに我々が開発した四炭素増炭法による1,3-ポリオール合成法を用いて、不斉炭素を3個もつ1,2,4,6-テトラオール誘導体4種を合成することに成功した。 2.CD差スペクトル解析 合成したモデルポリオールは、CDスペクトル測定のために2種の誘導体すなわち完全ベンゾイル体(I)と1-O-ピバロイル-2,4,..-ベンゾイル体(II)に導いた。IとIIのCDスペクトルを測定し両者の差スペクトルを求めたところ、そのコットン効果の符号が正の符号ならば2S配置、負ならば2R配置と決定できることが判明した。従って、本法は、関連天然物の立体化学の研究に対して有用な手段を提供するものである。
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