研究概要 |
(1)金沢市市街地の大気中1,3-,1,6-,1,8-ジニトロピレン(DNP)及び1-ニトロピレン(1-NP)の平均濃度は,それぞれfmol m^<-3>,サブpmol m^<-3>〜pmol m^<-3>レベルであった.これらの化合物濃度は,日中に高く夜間から早朝に低い日内変動を示し,交通量と高い相関が認められたことより,主要発生源は自動車と推定された.また,これらの化合物濃度は春から夏に低く,秋から冬に高い季節変動を示し,その要因の一つとして,前者には太陽光による光分解が,後者には逆転層による大気の安定が考えられた. (2)ガソリン車とディーゼル車の排ガス中DNP,1-NP濃度及び粉じん量を比較すると,DNP濃度は大差ないが,後者は前者に比べて1-NP濃度が遙かに高く,粉じん量も多い.これらに基づいて金沢市市街地の大気中DNP,1-NPについて発生源としてのディーゼル車の寄与率を求めると,それぞれ約90%,99%以上と試算された. (3)金沢市,東京都,札幌市の大気中DNP及び1-NP濃度には,都市の特徴によって多少の違いがあるものの,類似した日内及び季節変動が認められた.3都市の中では,札幌市がDNP濃度に対する1-NP濃度の比が最も大きく,その理由として,ガソリン車に対するディーゼル車の保有台数の割合が高いことが考えられた. (4)大気中1,3-,1,6-,1,8-DNP及び1-NP濃度推移と,Ames試験による大気直接変異原活性推移との相関は高く,上記化合物の大気直接変異原活性における寄与率は,YG1024株では約30%,TA98株では約10%と試算された.粒径別では,肺胞に沈積する割合の高い1.1μm以下の最微細粉じんに,化合物と変異原活性のいずれも最も多く分布していることが明らかとなった.大気変異原性に寄与するDNP,1-NP以外の化合物は,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより,DNPよりも低極性であると推定された.
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