| 研究概要 |
本研究は,「イオン選択性電極の血中薬物濃度測定への応用」を中心に進められ,これまでに,小児難治性てんかん薬(臭化物薬剤),抗不整脈薬(プロカインアミド,ブレチリウム)および抗炎症薬(サリチル酸)の血中濃度が電極法により定量された。電極法の利点は,タンパク質に結合していない遊離形の薬物濃度を,血清中に電極を浸すだけで定量できることである。一般に,薬物による治療効果は,血液中の遊離形薬物濃度との相関性が強いと考えられているが,これまで開発されてきた方法では血液中のタンパク質と結合した部分も含めた総薬物濃度を測定することが多い.遊離形の薬物だけを定量するためには,例えば,血清サンプルからタンパク質に結合した部分を限外ロ過などにより分離する必要があり,測定に必要な血清量も多量になるうえ,分析に要する時間も必然的に長くなる。私達は,電極法が遊離形の血中薬物濃度を測定するための新しい簡便な方法になりうるかどうかを,今回,タンパク結合率の高いサリチル酸を用いて検討した。サリチル酸を含んだ血清中の遊離形薬物濃度を,(1)血清そのままで電極法を用いて定量する,(2)血清を限外ロ過し,遊離形のサリチル酸だけを含む試料を調整して,従来から行われている吸光度法によりサリチル酸を定量する。その結果,電極法と吸光度法との相関関係(Y=0、0489+1.08X, R=0.997)はよく,電極法が新しい遊離形薬物濃度の定量法となることが初めて示された。
その他,電極法は,麻薬(コカイン),覚せい剤(アンフェタミン)および血清コリンエステラーゼ活性の定量,あるいは生体膜と薬物の相互作用研究に応用された。
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