研究概要 |
本研究期間中、リボヌクレアーゼT2ファミリーに含まれるRNase Rhの遺伝子組換え体(RNase RNAP-Rhと省略)及びその部位特異的改変体Y57Wについて7種類(RNAP-Rh,RNAP-Rh+2′-AMP,RNAP-Rh+2′-GMP,Y57W,Y57W+2′-AMP,Y57W+3′-AMP,Y57W+2′-GMP)の結晶構造を行った。振動カメラR-AXISIIcあるいはワイセンベルグカメラを用いて収集した回折データを用いて、構造を決定、引き続いて結合距離・結合角等に束縛をかけた最小2乗法による精密化を行い、全ての解析において、信頼度因子Rは良好な値を与えた。まず初年度で、天然型のRNase RhとRNAP-Rhの立体構造には、大きな違いがないことを確認した。次に後者に阻害剤2′-AMPを導入して、基質の塩基がどのように認識されるかを探索した。その結果、Trp49が底側、Tyr57が蓋側となって塩基をサンドイッチし、Asp51が塩基と水素結合をして、基質を認識していることが、初めて明らかにされた。2年目に入って、RNAP-Rh+2′-AMPおよびY57W+2′-AMPの構造を比較するために、活性部位付近の残基で重合せをした所、2つの複合体の間でかなり良い一致を得た。Y57WのAやGに対する活性の向上は、基質の塩基の認識部位の蓋の役目をしているTyr57がTrpに置き換わったことによるスタッキング能の向上に基づくものであると結論づけることができる。Y57Wは2′-AMPが存在しない状態では不安定であることも分かった。基質特異性が非特異的であるのが本酵素の特徴であるので、A以外の塩基(G)をもつ阻害剤を入れた複合体の構造解析も行った。解析の結果は、Aの場合と良く似た様式でグアニン塩基は酵素に結合していることが分かった。酵素-G間の水素結合はAの場合の2本から1本に減り、酵素ーリン酸基間の水素結合は4本形成されていた。この水素結合は全て側鎖とのものであった。Y57W+2′-GMP複合体においては水素結合に関しては若干異なり、グアニン塩基とは2本、リン酸基とは5本の水素結合が形成されている。
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