研究概要 |
最近のあらゆる分野の国際化の流れの中で,国際ハ-モナイゼイションが進められている.医薬品の安定性に関する合理的な合意を得るためには製剤の物理化学的な特性が生物学的利用能や製剤の安定性に与える影響を基礎的に検討しなければならない.そこで,医薬品原末の物理化学的特性が溶解性や成形性などの製剤特性に与える影響とその保存条件下における安定性を定量的に検討し,その機構と溶解性の関係を解明する方法を学問として確立するために以下の研究を行った. 1)各種の温度水準(15-55℃)と湿度水準(0-100%RH)を組み合わせた保存条件下でカルバマゼピンの結晶多形について表面分解率の経時変化を赤外線吸収スペクトル正反射法を用いることにより克明に追跡する.得られたデータに固体反応に関係する種々のモデル式を適用し,表面での分解機構を解明した. 2)フェノバルビタール結晶多形の安定性試験から算出された誘導期および転移速度定数の各々について重回帰分析を行い,添加物の特性値と結晶の溶解性との関係に及ぼす温度および湿度の影響を結晶間で統計的に比較検討した.DSCにより測定される転移過程における活性化エネルギーや半減期に及ぼす湿度の影響を各結晶毎に求めた吸着等温線と関連させて検討し,有用な知見を得た. 3)ピレタニド結晶多形の保存条件下での多形転移に伴う各結晶の溶解性の変化を、回転円盤法によって求められる溶解速度定数と粉末分散法による飽和溶解度の両面から検討し,添加物の溶解特性に及ぼす転移の影響を比較検討し,本結晶の安定性を証明した.
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