研究概要 |
好中球の殺菌にはスーパーオキシド(02-)などの活性酸素が重要な働きをしている。この02-の産生を担っているNADPHオキシダーゼの構成成分としては細胞膜のシトクロムb558とともに細胞質に存在するp47-phox,p67-phox,p21-racが知られている。我々はNADPHオキシダーゼの無細胞系での活性化を促進する新規の低分子量化合物を好中球細胞質に見出した。今回、同様の促進活性をもつ低分子量化合物が脳にも存在することを明らかにし、この物質の性質を好中球由来のものと比較検討した。 脳に存在する促進性の低分子化合物は、既存のFAD、GTPγS、DGを充分加えた時にも更に促進能が認められることから別の機構を介して働く別の化合物であることが明かとなった。しかし、好中球細胞質に存在する低分子化合物とは相加性が認められず、同じ種類の物質と思われた。また好中球の超音波処理による細胞膜と細胞質を調製する過程において超音波処理の強さに応じて低分子画分の促進能が増加した。この現象を検討した結果、低分子量化合物は細胞質の高分子量化合物に結合しており、超音波処理により高分子化合物から遊離することが推測された。 一方我々は従来よりp47-phoxのリン酸化がオキシダーゼ活性化に重要であり,p47-phoxのリン酸化/脱リン酸化により活性化が制御されていることを報告してきた。今回p47-phoxのリン酸化とオキシダーゼ活性化との関係を更に詳細に検討した。その結果p47-phoxはリン酸化されれば活性化を引き起こすという単純な図式ではなく、p47-phoxのリン酸化の程度、リン酸化部位により逆に活性化が抑制される機構も存在することが明らかとなった。 これらの結果は好中球の活性酸素産生の制御には複数の機構が関与しており、活性酸素の産生をきめ細かく制御しているものと思われる。
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