研究概要 |
ヒト胎盤シアリダーゼが酸性条件下37℃でインキュベーションを行うと著しい活性化を受ける。著者らは先にこの活性化現象がアミノペプチダーゼAの阻害剤アマスタチンによって阻害を受けることから、プロテアーゼの関与する可能性を示した。今回、この活性化に関与するプロテアーゼの分離を試みる一方、活性化に関与する因子についてさらに詳細な検討を行った。 アミノペプチダーゼA活性を指標にヒト胎盤よりプロテアーゼの分離を試みた。糖たんぱく質画分のセファデックスG-200ゲルろ過により二つのピークが観察されたが、それら両画分にある酵素の至適pHはいずれも7付近であり、これはシアリダーゼの活性化における至適pH5.0とは異なるものであった。また、プロテアーゼ活性は非常に不安定で精製が困難であり、精製酵素を用いたシアリダーゼ活性化への関与について確かめるまでには至っていない。 一方、シアリダーゼの活性化に関与する因子について、緩衝液、イオン、pHなどによる影響を調べたところ、ハロゲンイオン特に塩素イオンによって濃度依存的に活性化が促進されることを見いだした。塩素イオンによる活性化はインキュベーション時間に依存しており、塩素イオンの作用は直接的というよりは、活性化に係る酵素などへの作用を介して影響を及ぼすものと考えられた。(日本薬学会第117年会講演要旨3,p.124,1997) 高等動物酸性シアリダーゼはβ-ガラクトシダーゼ及び保護蛋白と呼ばれる蛋白質と複合体を形成していると考えられており、ニワトリ及び牛肝臓を用いて複合体の性質、保護蛋白質の機能について検討を行い、シアリダーゼ複合体の機能に関する新しい知見を得た。 (comp.Biochem.Physiol.,115B,5411996,Biochim,Biophys.Acta 1997 impress)
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