研究概要 |
生理活性は天然有機化合物あるいは、医薬品の多くは、複数の環が融合した多環構造を持っている。そこで高い位置及び立体選択性の基に目的とする多環化合物を合成する手法を開発することは、合成有機化学において重要な研究課題である。 申請者は、同一分子内に2個のα,β-不飽和カルボニル基が存在する化合物に2種の官能基間で連続的に付加反応を行って六員環に縮環した多環構造を構築する方法を確立した。ついで分子中にケトカルボニル基とα,β-不飽和エステル基の双方が存在する化合物に対して、ケイ素原子を含む酸・塩基混合反応剤を作用させることによって、連続的にミカエル及びアルドール反応を行った四員環に縮環した多環化合物の新規合成法を開発した。 さらに上記方法で合成した四員環化合物から、三員環化合物への異常な転位反応を見いだし、小員環化合物合成の新たな方法論を開拓することが出来た。また本反応によって生成する三員環化合物を基質として、三員環の開裂に引き続いての連続的なミカエル・アルドール反応によって四員環化合物の立体選択的製造法も発明した。 新しい抗がん剤として期待され、臨床的にも使用され始めたキタノールは八員環、2個の六員環及び四員環を持つ化合物で、上記連続反応を利用して、効率的な合成法を確立すべくさらに検討を行っている。
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