研究概要 |
1.シクロペンテニル残基を有する核酸塩基はシスジオール化によって炭素環リボヌクレオシドへ変換できるため合成中間体として重要な化合物である.しかし,そのシスジオール化の立体選択性に関してはこれまで全く議論されていなかった.著者はシスジオール化はシクロペンテン環の3, 5-位置置換のcomformationに強く依存することを明らかにした. 2.2-Azabicyclo [2. 2. 1] hept-5-en-3-one(ビシクロアミド)をフッ素ガスにより,cis-ジフロロ体とした後,還元的アミド結合開裂を行い含フッ素シクロペンチルアミンを得た.さらにプリン環の構築を行い炭素環2, 3-dideoxy-2, 3-difluoroadenineならびにguanineを合成した.これらの抗HIV活性を検討した結果,全く活性は認められなかった. 光学活性炭素環ヌクレオシドの原料となるビシクロアミドの不斉合成を検討した.すなわち,benzenesulfonyl cyanideとcyclopentadieneとの反応を各種キラルルイス酸存在下反応を行ったところ,キラルジオールとエチルアルミニウムジクロリドから調製したキラルルイス酸が最も良好な選択性を示した. 4.新しい反応活性種であるニトロソケテンと各種ケトンより環状ニトロンを合成した.これらニトロンはボルナジエンやビシクロアミドとエキソ付加しα-アミノ酸残基をもつ炭素環ヌクレオシドの合成中間体を生成した. 5.新しいジエノフィルとしてdimethyl trifluoroacetylaminomethylenemalonateを合成し,cyclopentadieneとのディールス-アルダー反応を行い炭素環ホモヌクレオシドの前駆体に誘導可能なビシクロ体を高収率で得た. 6.炭素環アデニンヌクレオシドの高圧下でのアデノシンデアミナーゼによる脱アミノ化を検討した.その結果、高圧は常圧では進行しない脱アミノ化反応を可能にし,炭素環ヌクレオシドの光学分割に有効であることが明らかに出来た.
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