研究概要 |
1.本課題のリ-ド化合物であるサリドマイドが、腫瘍壊死因子(TNF)-αの生産調節活性において細胞種特異性を示すことを見いだした。更に、そのサリドマイドにおいて、光学異性体間に活性の差を実験的に検出することが事実上不可能であることを、サリドマイドのラセミ化速度の測定をも根拠として示した。 2.前項を受けて、サリドマイドをラセミ化し得ない誘導体、すなわちメチルサリドマイドに導き、これを光学分割してTNF-α生産調節活性を測定し、S体にのみ活性がありR体が無活性であることを見いだした。加えて、(S)-メチルサリドマイドのTNF生産調節活性がサリドマイドのそれをはるかに凌ぐものであることを見いだした。 3.前項を受けて、サリドマイドの構造展開を図り、各種フタルイミド系化合物を合成・検定した。無置換フェニル基を有する化合物においては、フェニルフィタルイミド、ベンジルフタルイミドは無活性であるが、フェネチルフタルイミド(P2P-00)においてサリドマイドに匹敵する活性を引き出すことに成功した。 4.前項を受けて、置換フェニルフタルイミドを系統的に各種合成・検定した。その結果、フェニル基オルト位の疎水的置換基の嵩高さが活性に大きく影響することを明らかにした。そして、ジイソプロピルフェニルフタルイミド(PP-33)という、サリドマイドを活性面ではるかに凌ぐ化合物の開発に成功した。 5.前述3,4項を受けて、フェニル基並びにフタルイミド基への置換基導入の効果を検討した。その結果、大旨電子吸引基の導入が活性を増強することがわかった。特にフッソ原子の導入により得られたFPP-33は活性的に興味深い化合物であり、今後の研究に期待している。
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