研究概要 |
本年度の研究で以下の3点を明かにした。 1 エンドトキシンやサイトカインによってNO合成酵素(Nirtic oxide synthase)が誘導されるがその機構は不明である.本年度の研究で、血管平滑筋でインターロイキン-1などのサイトカインがNO合成酵素を誘導することを明かにし,さらに誘導に至る情報伝達経路にチロシンキナーゼによる蛋白のリン酸化が関わっていると考えられる結果を得た。 また,リュウマチに効果のあるクロズルの有効成分トリプトキノン誘導体もNO合成酵素の誘導を阻止することを発見し、トリプトキノン誘導体の抗リュウマチ効果とサイトカインおよびチロシンキナーゼの関連も明かにした。 2 血管内皮細胞におけるNO産生は、活性物質による受容体刺激〜細胞内のCaストア-の枯渇〜細胞外からCaの流入〜NO合成酵素の活性化〜NOの産生という一連の経路があり,受容体刺激からCaの流入に至るシグナル伝達経路にチロシンキナーゼによる蛋白のリン酸化経過が含まれているとの推論を得るに至った.さらにNO合成酵の誘導に関与するチロシンキナーゼと,Ca流入に関与するチロシンキナーゼは異なったタイプであることも明かにした。 3 血管内皮のconstitutive typeのNO合成酵素は誘導されないとされていた.しかし私達はエンドセリン-3とPAFによる血管拡張反応,cGMP産生,培養細胞NO_2^<-->の蓄積を指標にして,mRNA合成阻害剤、蛋白合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、サイトカイン類、エンドトキシンを組み合わせてconstitutive typeの酵素も誘導されるという新しい仮説を提示した。 これらの研究結果をもとに第68回日本薬理学会年会のシンポジウムで"NOと情報伝達"をオ-ガナイズしている。
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