研究概要 |
乳癌は中年女性に最も多く発生し、増加傾向にあるので、より有効な治療方法の確立が急務である。 乳癌細胞の増殖は、エストロジェン(E_2)などのホルモンのほか、TGFβ,FGF,PDGF,EGF,IGFなどの成長因子により多重に調節されている。原発乳癌の2/3を占めるE_2レセプター(ER)陽性乳癌はTamoxifene(TAM)などの抗E_2剤に良く反応して腫瘍を退縮させるが、TAMの継続投与により、乳癌細胞はE_2依存性を維持しながらも、TAM耐性を獲得して有効率が低下することが知られている。抗E_2剤耐性獲得機構の詳細はまだ明らかでない。 乳腺細胞の分化機能の発現を促進させて未分化細胞への移行を防いだり、乳癌の抗E_2剤耐性獲得を妨げたり、または、交叉耐性のない薬剤を開発できれば、ホルモン療法による治療効果を一層高めることができる。 本研究では(1)乳癌細胞の分化機能発現調節機構と増殖の関係を解明すること、(2)TAM耐性細胞の特性を明らかにし、抗E_2剤耐性獲得機構を明らかにすることを目的に検討を行った。 その結果TGF-β,EGF,IGF-I,II,PDGF,FGFなど乳癌細胞で産生されている可能性のある増殖因子のラジオイムノアッセイによる正確な微量定量系を完成し、培養細胞および乳癌組織で産生させるこれら増殖因子を測定できるようになった。 ホルモン療法剤による成長因子の変動について検討し、種々の抗E_2剤を乳癌細胞に投与すると細胞を分化促進させる成長因子であるTGF-βの産生を促進することを明らかにした。現在MCF-7細胞と我々が確立したTAM耐性MCF-7細胞についてホルモン療法剤によってTGF-βを始めとした成長因子産生に対する作用を詳細に検討している最中であり、耐性獲得と成長因子の関係について解析を進めている。
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