研究概要 |
嘔吐のモデル動物フェレットを用いて,制癌剤のシスプラチンならびに硫酸銅の投与により腹部求心性迷走神経活動が嘔吐の発現時間に一致して有意に上昇した.またこの腹部求心性迷走神経活動の上昇は嘔吐を起こさないラットにおいても同様に認められた.このシスプラチンによる迷走神経活動の増加を制吐薬であるセロトニン(5-HT)_3受容体抗拮抗薬のオンダンセトロン,ならびに5-HT_3と5-HT_4受容体拮抗薬であるN-3389は有意に抑制した.この抑制効果はオンダンセトロンよりN-3389の方が大であった.さらに5-HT,5-HT_3受容体作動薬である2-メチル-5-HTならびに最近嘔吐発現に関与しているといわれている5-HT_4受容体作動薬の5-メトキシトリプタミンもその用量に依存して迷走神経活動を上昇させた. フェレットから摘出した腸管を用いた5-HT遊離実験においても,2-メチル-5-HTは用量に依存して5-HT遊離を増加させた.ラット摘出腸管を用いてもフェレット同様,2-メチル-5-HTにより5-HT遊離上昇が認められた.この5-HT遊離の増加は5-HT_3拮抗薬のグラニゼトロン同時灌流により有意に抑制した.また5-メトキシトリプタミンも2-メチル-5-HT同様,摘出腸管から用量依存的に5-HT遊離を増加させることが明らかとなった.これらの事からフェレットならびにラットにおいて,腹部求心性迷走神経活動の上昇ならびに摘出腸管からの5-HT遊離には5-HT_3受容体以外に5-HT_4受容体も関与することが示唆された.またこれらの結果から腹部求心性迷走神経活動上昇は腸管からの5-HT遊離に起因した現象であることが示唆された.
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