研究概要 |
平成6年度の研究において、次のような実験成績が得られた。 1.高コレステロール食負荷マウスの胸部大動脈における血管反応性およびprazosin,pravastatin慢性投与後の血管反応性の変化:高コレステロール食負荷によりAChによる内皮依存性の弛緩反応は、対照群と比較して著明な減弱が見られた。しかし、prazosin処置群、pravastatin処置群では弛緩反応は対照群と同程度まで回復がみられた。血中コレステロール値は高コレステロール食負荷時では、総コレステロール値、LDL値ともに対照群と比較して有意な増加がみられたが、prazosin処置群、pravastatin処置群では総コレステロール値およびLDL値ともに有意な減少がみられた。このことから、血中コレステロール、特にLDL値の上昇は血管内皮細胞を障害し、EDRF(NO)の産生あるいは拡散の低下を起こしていることが示唆された。 2.高コレステロール食負荷STZ誘発糖尿病マウスの胸部大動脈における血管反応性のおよびprazosin,pravastatin慢性投与後の血管反応性の変化:AChによる弛緩反応は対照群と比較してprazosin処置群、pravastatin処置群ともに回復は認められなかった。血中コレステロール値は総コレステロール値、LDL値ともに対照群と比較して有意に増加し、prazosinおよびpravastatin処置後でも総コレステロール値、LDL値に減少はみられなかった。以上の結果より、STZ誘発糖尿病時におけるAChによる内皮依存性弛緩反応の減弱は高脂血症動物の場合と明かに異なることが示唆され、今後、糖尿病性合併症の治療の一助になる研究成果が得られた。
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