研究課題/領域番号 |
06672285
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用薬理学・医療系薬学
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研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
芦野 洋美 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 遺伝子情報研究部門, 研究員 (40222608)
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研究分担者 |
島村 真里子 (島村 真理子) 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 化学療法研究部門, 研究員 (00124462)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1995年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1994年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 血管新生 / 血管内皮細胞 / 硫酸化多糖 / 海藻 / 管腔形成 / 血管新生阻害物質 / FGF / 遊走 |
研究概要 |
血管新生は固形癌の増殖に必須な現象である。従って微小な転移巣に血管新生阻害剤を投与すれば、兵糧攻めによって腫瘍の増殖を阻止し得るため、転移巣増殖の予防に役立てることが可能と考えられるが、その過程の制御機構に関してはまだ大半が不明のままであり、実用に供する有力な阻害剤も十分な開発に至っていない。本研究では、より実用の可能性の高い阻害物質の探索と、それによる血管新生機構の解明を課題とした。 我々は血管が侵入できない軟骨には阻害活性を有する物質が存在するものと推定し、その多量成分である酸性多糖の血管新生阻害能に注目した。またFGFのような血管新生促進因子と目されている因子の、酸性多糖へパラン硫酸との結合による作用制御の可能性が考えられ、その上血管新生促進はまず因子の内皮細胞活性化引き金作用から開始されるため、個々のステップの阻止よりも引き金の抑制が重要であるという考えに至った。以上より、血管新生阻害剤として可能性の高い酸性多糖を多く含有している海藻を用い、酸性多糖の阻害動態、FGFの作用に対する効果、血管新生過程の制御機構を検討することにし、次のような成績を得た。 (1)褐藻由来フコイダンが強い阻害活性を示し、ポルフィランは阻害効力は弱いが増殖抑制を惹き起こさなかった。藻体外に粘性物質を多量に産生する5種類の海産微細(単細胞)藻類から初めて抽出した酸性多糖に強い血管新生阻害効果を示すものを見出すことができた。ウロン酸を有する褐藻由来アルギン酸は殆ど阻止活性を示さなかった。(2)ポルフィラン、デキストラン硫酸共に遊走を顕著に抑制し、in vitroの疑似管腔形成をも著しく阻止し、FGF誘発疑似管腔形成及び遊走促進活性も十分に阻止し得た。(3)硫酸含量の違いによる血管新生阻害効力の差異を検討し、硫酸基/糖の比が2に近い場合に比較し、1以下では阻害活性が極めて低く遊走も微弱な抑制にとどまった。(4)接着が硫酸化多糖の存否で変化するかどうかの解析を試みた結果、血管新生を阻害する硫酸化多糖は細胞を撒くと同時に処理した場合、プレートへの接着性を促進する傾向が認められた。接着の促進が細胞の運動能を抑制し遊走を妨げた可能性が考えられる。(5)高分子量であるポルフィラン等酸性多糖の吸収促進及び抗血液凝固作用阻止のため低分子化を試み、血管新生阻止能の保持を検討した。その結果、ごく小さなオリゴ糖のポルフィラン最小構造でも血管新生阻害が認められた。(6)海産微細藻類由来新奇構造未解析酸性多糖でも硫酸化度と血管新生阻害活性との関与が示唆された。 以上、海産微細藻類から血管新生阻害作用を有する数種の構造未解析、新奇の酸性多糖を見出すことができ、フコイダンとポルフィランは有効な阻害物質でなる可能性が示唆された。硫酸化多糖の作用点は遊走抑制として認められる様なFGF様因子による内皮細胞活性化の阻止と推察され、この阻止の発揮には硫酸含量が大きく関与しているものと考えられた。一方硫酸化多糖は血管内皮細胞間接着に関与制御し、遊走を抑制している可能性が推察された。低分子化ポルフィランによるオリゴ糖血管新生阻害剤開発の可能性も示唆される。
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