研究概要 |
本研究ではフリーゾーンキャピラリー電気泳動法を基本原理とし、未処理溶融化シリカカラムを用いて、電解液の選択、加電圧の調整の研究を行い、前処理を要さない血清蛋白分画分析法の確立を行った。さらにゼロ電位法を基本原理としたLDアイソザイム分析法の確立を行った。血清蛋白分画分析法は20μm(直径)×20cm(有効長)の末処理溶融化シリカカラムで電解液として150mMホウ酸緩衝液・水酸化ナトリウム溶液(pH10.0)を用いて、20mMりん酸-75mM塩化ナトリウム溶液にて血清を11倍に希釈した試料,約0.2nLをキャピラリーカラムに注入し、10kV6.5分の印加で約10分画のできる血清蛋白分画分析法を確立した。これらの蛋白は抗血清を用いたアフィニティカラムの素通り画分を本法で分析することにより、IgG,C3,α-MG,Tf,HP,α-AT,Alb,PreAlbなどと同定された。また、臨床検査現場で一般化されているセルロースアセテート膜電気泳動法(古典的な5分画)と本法の各蛋白画分は良好な相関を認め、1N-NaOH溶液でのカラム洗浄で再現性の良い連続分析を可能とした。LDアイソザイム分析では電解液にLDの基質となるL-乳酸および補酵素であるNADを含んだ25mMトリス緩衝液(pH8.7)を電解液として、25mMトリス緩衝液で5倍に希釈した血清、約1nLを試料として20μm(直径)X50cm(有効長)の未処理溶融化シリカカラムに導入し、10kV,5分間、電圧を印加後、いったん、電圧の印加を止め(ゼロ電位法)、アイソザイム蛋白と電解液中の基質を反応させ、その結果、生ずるNADHを、さらに10kV,30分の印加によりカラム外に排出しLDアイソザイムを分析する方法を確立した。本法は従来の膜電気泳動での報告値と良好な相関を示し、満足される再現性も確認された。これらの方法は従来、自動化が不可能とされた電気泳動法の自動化を可能した。今後、臨床検査の簡易分析法として、その普及に大きな期待がかけられる。
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