研究概要 |
1.妊婦の抗血小板抗体免疫感作 のべ10000名の妊婦血清を固相法血小板混合赤血球凝集法(MPHA)を用いて抗血小板抗体産生を調査した。96名の抗体陽性者を確認した。その内訳はHPA-4b:24名,5a:2名,5b:68名,4b+5b:1名,NaKa:1名であった。うち新生児血小板減少症(<10000/μl)を呈したのはHPA-4b抗体保有妊婦からの児3名だけであった。 2.抗血小板抗体保有妊婦の胎児血小板型の出生前診断 夫がヘテロ接合体の場合,児の新生児血小板減少症の羅患可能性は理論上50%である。高力価(64〜1280倍)の抗血小板HPA-4b抗体を保有する3名の妊婦の羊水を得て,胎児の血小板型を遺伝子増幅法(PCR-SSP)にて推定した。用いたプライマーを下記に示す。 4a:5'-GCT GGC CAC CCA GAT GCG-3' 4b:5'-GCT GGC CAC CCA GAT GCA-3' 共通:5'-TAGCAG GGGTTT TCGAGG GCCTCT 2名の血小板型は母体の抗体と適合(HPA-4a/a)で出生後の血小板数は正常であった。他1名の胎児血小板型は4a/bで母体抗体と不適合と判断した。臍帯血で血小板減少が確認された。3名の児ともに出生后の末梢血を用いた血小板型と完全に一致した。 以上のことから、抗血小板抗体保有妊婦の胎児血小板型を,羊水から得られたDNAを用いて遺伝子増幅することにより,安全に出生前に決定可能なことが示された。
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