研究概要 |
冬季における入浴の温熱・睡眠効果を検討する目的で,前橋市に居住する65歳から83歳の高齢者30名を対象に測定を行なった。測定は高齢者が居住する住宅内において睡眠深度に対応し,しかも被験者の睡眠を妨害しない睡眠中の体動や直腸温・皮膚温と温冷感覚および睡眠・保温調査を行った。測定条件については,以下を提示し同意の得られた者を対象者とした。 1)入浴あり,なしを1日ずつ無作為で組み合わせ,原則として連続した2日間とする。 2)測定日の前日の睡眠は普段通りとし,測定日の2日間は,昼間の運動を同じ程度に行ってもらう。 3)睡眠中に用いる寝具は2日間とも同一のものにする。 4)浴槽には10分間浸漬する。 5)睡眠中の暖房器具を用いる場合は2日間とも同一条件で用いる。 データは入浴日と非入浴日で比較し,次の結果を得た。 1.冬季における入浴時間は,18〜21時の間に入浴する者が83.3%であり,平均睡眠時間は入浴日9時間7分,非入浴日8時間44分であった。 2.睡眠中の暖房器具の使用者は60.0%であり,電気毛布やアンカで寝床内を一晩中暖めていた。 3.寝室の室温は,就床後30分は約11℃,その後時間の経過とともに下降し,湿度は就床後30分は約43%,時間の経過とともに上昇を認めたが,室温・湿度ともに入浴日・非入浴日で差はみとめられなかった。 4.睡眠中の体動数は,就床直後から就床後4時間半までは入浴日の体動数が非入浴日より少なかった。睡眠30分,1,2,3時間の30分間において入浴日の体動数が有意に少なく,入浴の睡眠効果,特に入眠効果が得られていた。 5.直腸温は入浴日の就床時では37.5℃であり,非入浴日よりも0.6℃高く,入浴日が高かった。自覚的には入浴日の保温効果が顕著であった。 以上の結果,暖房器具使用により入浴日と非入浴日の平均皮膚温の差は小さいが,体動数の少なさや主観的な睡眠評価では入浴日で良眠や温熱効果があることが明かにされた。
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