研究概要 |
本研究では,プラスチック家庭廃棄物の再利用について検討した。プラスチック家庭廃棄物を分別した結果,主なポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン,ポリエタレンテレフタレートのほぼ6種類に限定された。これらの中から装置等の性能を考慮して結晶性プラスチックとしてポリ塩化デニリデン(PVDC),非晶性プラスチックとしてポリスチレン(PS)を選んだ。PVDCとPSとは非相溶性であるため,試料をPVDCの融点以上の温度でブレンドすると,非相溶ブレンド物に特有な海島構造が現れる。そこで両成分のガラス転移温度以上である160℃で,交付された補助金により購入した加熱ローラ延伸機およびフットポンプ式小型プレスによりPVDC/PSのブレンド試料を作製した。 得られたブレンド試料のブレンド状態は,偏光顕微鏡観察,熱特性は偏光顕微鏡に搭載したサーモシステム,力学特性は北海道工業技術センターの引張試験機により検討した。偏光顕微鏡観察からPVDCの融点以下でブレンドしたため,大きな不規則なドメインの集合体組織となり,特徴的な高次構造は発現しなかったため,予定していた小角光散乱による測定は中止した。また,ブレンド試料の熱特性は,PVDCの融点が現れたのみであった。力学測定の結果から初期弾性率,破断応力,および破断ひずみを算出した。PVDC/PSは非相溶系のブレンドであるため,単純な加成性が成立すると思われたが,ブレンド比に対する初期弾性率の値を検討すると,PVDCに数%のPSを加えるだけでPVDC単独の場合よりも初期弾性率は大きく増加し,また破断応力は大きく減少した。このことは非相溶系でありながら両成分間に何らかの相互作用が存在することを示唆している。
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