研究概要 |
加齢とともに色の見え方に大きな偏りが生じてくる高齢者にとって、注目色や安全色が有効に作用しているのか否かを検討し、高齢者の日常生活行動を安全にサポートする色彩の解明を目的とした。 実験・調査環境は平成6年開所の広島県下の特別養護老人ホーム(定員:特別養護老人ホーム50名,ショートステイ20名,デイサービス8名,ケアハウス15名)とし、色彩輝度計にCOLORED OPTICAL GLASS(HOYA:Y44)を着脱したそれぞれの条件下で測色(約200ケ所)を行なった。さらに、JIS安全色彩(8色)準拠により作製した刺激(φ10mm,φ20mm)を用いて視野計測(被験者:着色フィルターを装着したモデル高齢者,65歳以上の高齢者)実験を行なった。 着色フィルターを着脱したそれぞれの条件下での写真撮影と測色結果より、本研究協力施設では、TINT系のベースカラーとPURE系のアクセントカラーが採用されており、高齢者が好む傾向の強い色調(TINT〜PURE)としてあげた平成5年度科学研究費補助金による研究結果が有効に活用されていることを確認した。着色フィルターを介した測色結果は、すべての測定ケ所における表面色,光源色とも色度が変化し、特に、TINT系の色彩は黄方向への移動と、高彩度,低明度化が認められた。非常口ならびに消化栓などに使用されている安全標識燈の緑,白,赤についても同様に色度の変化が認められるが、識別性への影響は少ないと考える。 JIS安全色彩を刺激とした視野計測結果は、モデル高齢者および高齢者のいずれも若年層に比べ、刺激の存在の認識(視認性)ならびに刺激の色彩の認識(誘目性)が低下し、中でも赤,緑,赤紫などの安全色彩の誘目性低下が著しい。しかし、刺激面積を大きくすることにより各安全色彩とも誘目性が向上することから、注目色や安全色を用いた標識の色彩と面積の相乗効果が、高齢者の生活活動の円滑な遂行に有効利用できることを示唆した。
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