研究概要 |
ソバ(Fgopyrum escallentum)は古来より一般庶民の主要な栄養源として,また代表的救荒作物として焼畑農業に重要な位置を占めていた。しかしその特徴的物性(弱粘性と舌触りの不快感)のため今日的嗜好性に合わず加えてソバアレルギーへの懸念から敬遠されマイナ-作物への転落を余儀なくされており,現在なお望ましい改良種は開発されていない。この研究ではソバの高栄養価や救荒的特性を損なう事なく遺伝子工学的手法による改良品種の開発を試行した。 ソバの種実蛋白質をOsborne法(穀物蛋白質の一般的分画法)に従って分画し各分画を電気泳動(SDS-PAGE)的に展開し比較すると主要蛋白成分としてグロブリン画分が提示される。研究ではこのグロブリン蛋白質(FE25)をその対象とし、Poly(A)-mRNAの分離とcDNAの作成およびその発現を試みた。すなわち成熟途上にあるソバの種実(開花後2週間目)を塩酸-ガアニヂンで乳化して種実内RNA分解酵素を失活させ,全RNA分画からアフィニティークロマトグラフィー(poly(U)-agarose)により粗poly(A)-RNAを得た。これを庶糖密度勾配遠心法で分画し試験管内翻訳システム(rabbit reticurocyte lysate)により蛋白合成をおこない,生成物中からFE25グロブリン抗体反応蛋白質画分を分取した。画分をSDS-PAGEで分析して分子量28,000の蛋白質を確認した。このmRNAを鋳型としてcDNA(相補的DNA)を作成した。まずmRNAより逆転写酵素(AMV)によりcDNAを合成,得られるcDNAを制限酵素(EcoRl,Sal-l)で切断しpCU8プラスミドに挿入後大腸菌DN-lに形質転換してcDNAライブラリーを作成し,FE25グロブリン抗体による反応陽性コロニーを得た。現在E25グロブリンに該当する蛋白質産生菌株よりcDNAの分離と確認を検討中である。
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