研究概要 |
これまでの「九州における高齢者の生活実態」と題した一連の研究から、今後の高齢社会においてより豊かな高齢期を過ごすためには,夫婦関係の重視ということがまず大切であると提言してきた。そこで,高齢期を夫婦のみ,あるいは生活分離をした同居という生活をする夫婦には,情緒面だけでなく行動面での一致もある伴侶性が,その関係の維持・発展のために重要な意味をもつと考えた。 研究の対象には,高齢期の準備期である中年期を取り上げ,中年期における伴侶性の形成を研究課題とした。第1段階として,若年期(20〜39歳)・中年期(40〜59歳)・高年期(60歳以上)の夫婦の伴侶性形成の実態を分析した結果,中年期は情緒面,行動面の両面で一致の程度が悪く,「危機的」な時期にあることが分かった。 つぎに,第2段階として,中年期(40〜69歳)夫婦の行動面での伴侶性(「夫婦一緒の外出」に絞り)形成の促進要因を探る実態調査を行い,分析した。その結果,中年期夫婦の伴侶性を形成していくには,まず,情緒面での一致,理解を中核として,つぎに,具体的な行動として,妻には積極的な社会参加(就業,社会活動)が,夫には家庭内に目を向け家事を担うという姿勢が求められることが明らかになった。つまり,「男は外,女は内」という性別役割分業・分業観は,夫婦の伴侶性形成にとって阻害要因になるということである。 また,本研究過程で,中年女性に積極的な社会活動を促すためには,意識面の変革だけでなく外出に際しての「装い」についても考察し,よりよい生き方への提言とする必要があるとの考えに至った。そこで,まず,衣料の購入費と生活行動の関係を分析した結果、中年女性が外出(特に社会活動のために外出)するにはかなりの衣料費がかかることが明らかになった。今後はこのように,多面的に夫婦の伴侶性形成の研究に取り組んでいく。
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