研究概要 |
本研究は、高齢化に対応した居住環境整備と伝統的な住生活文化の保全の問題について、急速な過疎化と高齢化が進む宮崎県内の児湯郡西米良村(人口1,543人、高齢化率31.9%)と西諸県郡須木村(人口2,786人、高齢化率24.6%)(1995年国勢調査時)の両村を調査対象地に選定して、高齢者および成人層に対する居住環境と住生活文化に関するアンケート調査・両村の伝統的な住宅の実測調査・そこにおける住まい方調査を実施し、その現状実態分析を通して、今後の課題を検討したものである。 アンケート調査の結果からは、両村ともに地域への愛着と永住志向が強く、地域協同性も維持される中で、医療施設や交通・道路や日常の利便性等の地域環境整備問題が明らかとなり、また、村の将来政策として、若者の就業保障と生活環境整備および高齢者福祉施設制度の充実等への要望が高い実態が認識された。各戸の住宅問題では、老朽化の問題や採光等の室内環境問題および収納および水まわり設備の不便等の問題が認められた。生活文化の面では、両村ともに豊かな伝統的生活文化・生活技術・生活経験を有し、現在の生活においても自然環境や物や精神性を尊重する生活姿勢がみられたが、今後の若い世代への継承性については不安感が読みとられた。さらに、地域の伝統的な集落や住宅の文化的な価値に対する認識は薄い実態も明らかになった。 両村の伝統的な住宅…西米良村の「米良型」住宅(主に県北西の山間部に分布する併列型住宅の系列に属する)と、須木村の「分棟型」住宅(主に県南西部の旧薩摩藩領に分布する)の実測調査とその住まい方調査の結果からは、両村ともに地域特性をもつ貴重な伝統的住宅が、過疎化と高齢化の進行、地域や家庭生活の変化の中で、年々変容と衰退の現状にある実態が認められた。高齢化に対応した支援システムの整備や住民の文化価値意識を高める努力等、緊急の保全策の必要が認識された。
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