研究概要 |
食の社会化が進み、これまでの家庭内調理では生じなかった「食が健康」へ与える影響を改めて考え直さなければならない。特に油は酸化されやすいため、大量調理では、大量の食材を揚げるフライ油およびフライ後の食品の劣化が問題である。従来の油の劣化測定法はマクロ的であり、生体傷害との関連での測定法ではない。本研究では油の劣化で生成する反応性の高い、生体成分と結合し易い低分子α,β不飽和アルデヒド類(C10以下)に着目し、その分別定量法を検討した。 低分子α,β-不飽和アルデヒド類は不安定なため,カルボニル試薬の2,4-DNPHでヒドラゾン化し、HPLCにより定量した(Develosil ODS-7, acetonitorile/Water/THF 70:29:1, Detect:UV350nm, Flow rate:0.8ml/min)。最も不安定な5-ヒドロキシノネナ-ル(HNE)を用い、ヒドラドン化の条件および抽出溶媒を検討した結果、抽出溶媒では、酢酸エチル>メタノール>クロロホルム>イソオクタンの順であったので、酢酸エチルを用い、ミキサ-でのヒドラジンとの混合は1分、反応時間は30>15>60分の順であり、30分とした。この条件下で、内部標準のヘプタナ-ルは他の不飽和アルデヒド類とRTが重ならなかった。オリーブ油にHNEを添加し、同様の操作を行った場合の添加回収率は99.38%であり、この方法で、目的とするアルデヒド類が精度良く微量定量できることが確認された。標品として9種のα,β-不飽和アルデヒドをヒドラゾン化し、HPLCの分別定量条件を検討した結果、直線的濃度勾配法(acetonitorile/Water/THF 60:39:1→90:9:1/30min)で、各ヒドラゾンのRTが分かれ、分別定量が可能であることが明らかになった。この方法を用いて市販食用油8種をブロックバスで200℃、5時間加熱し、目的とするアルデヒド類を測定した結果、アルデヒドの総量として、コーン、サフラワー油が約1200μg/mlと多く、シソ、焙煎ゴマ油は600μg/ml以下で少なかった。この方法により油の加熱で生じる反応性の高い低分子のアルデヒド類を正確に分別し、測定できることが判明した。
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