研究概要 |
「新体育論」の語彙分析の結果は,この体育論の用語表記を,教育学の理論やそれに関連する関連諸科学の成果に基づく用語表記として特徴づけることが可能であった。この体育理論の特徴的な用語表記は,箇条書きに示すと以下の通りとなった。 1「新体育論」の用語記述は,したがってまずは,この理論の固有な用語の系譜を確認しようとする場合には,基幹語ないし規定詞としての「体育」"physical education"を伴う複合語の造語などに着目する他には,系統的にそれらの用語を確認することができないものであった。 2「新体育論」の用語表記は,むしろ主観的で表現的で価値指向的な一連の「規定詞」によって特徴づけられていた。とりわけ心身相関に関わるいくつかの規定詞によって特徴づけられていたことが判明した。理論を特徴づける用語表記は,こうした心身相関を示す幾つかの規定詞の系譜を追うことによって確認が可能であった。 3また「新体育論」において最も重要であった用語の表記は,規定詞"natural"にかかわるものであった。この規定詞を多用することによって,この規定詞と結びついて成立する一連の用語に,正に「自然」にかかわる理論的本質性というイデオロギーを強調させていた。 なお「新体育論」以前に成立したとみなされる「遊戯教育論」に着目し,「新体育論」を特徴づける上記用語表記との関連を分析したが,両理論間での関連性や共通性は殆どなかった。このことは,「新体育論」における用語表記の歴史的意味を明らかにするものであり,そのオリジナル性をクローズアップさせる結果となった。
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