本研究は、「家元制度」に関する先行研究を検討し、スポーツ組織・集団の組織原理として特徴的にみられるであろう"擬制的家族制度としての家元制度"という観点から、様々なスポーツ集団の実態調査を予備的に行い、そこから"擬制的家族制度"の特徴を有しているスポーツ集団に対して本調査を実施しその特徴を明らかにするとともに、「スポーツ組織と個の関係」という視点から、わが国のスポーツ集団とそこにおける個人の等質性が形成されるメカニズムを実証的に明らかにすることを目的とした。 結果の全体的概要は次のようにまとめられる。 1)家元制度的社会の特徴であると考えられる質問項目の全てに対して肯定的な意見が強い。 2)個のレベルで捉えても、集団成員間のスコアのばらつきが少ない。 3)スポーツ集団には「きまりが」必要であると考えている成員が多く、そのきまりはやや厳しく、しかも歴史的に形成されてきている。 4)キャプテンについては、「性格・人柄で選ぶべき」と回答するものが多いが、現実には「技術的に優れた人がなっている」と考えられる。 5)監督・コーチの意見については、「必ずしも絶対ではないが、従うべきであると考え」、「自分の意見を堂々と述べる」は、この3者の関係の中では最もスコアが低い。 以上のようにまとめることができるが、わが国のスポーツ集団が極めて類似的で等質的な性格を有するようになるのは、スポーツ集団が家元制度的社会を形成しており、スポーツを通して集団規範を内面化し、集団における個も極めて等質的になってくると言える。
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