研究概要 |
本研究は、これまでに既に現象としては明かとなっている手の位置決め動作における動作空間の認知特性を,神経解剖学的な交叉性支配と注意機構としての交叉性支配といった大脳半球優位性,および脊髄運動細胞興奮性(脊髄路性反射)から検討することを目的とし,特に,動作空間操作のために,神経心理学領域で頻繁に用いられてきている90°頭部回旋法を採用した。この方法に関して,(1)随伴性陰性変動(CNV)を指標とする注意機構における大脳半球優位性,および(2)H反射を指標とする運動細胞興奮性における頭部回旋の影響,の2点から実験的に検討し,以下の結果を得た。 (1)90°頭部回旋時における大脳半球注意機能をみるために単純反応課題によるCNVを検討した.被験者は大学生18名で,パソコン画面上に警告刺激を出しその2秒後に動作手の第2指へ微弱な電気刺激を与え,マウスのキ-押し単純反応を行わせた.被験者の顔は画面方向,体幹は右または左90°,動作手は体幹正中面上という姿勢を保持させ,動作手を置く半側空間を操作した.課題遂行中のCNVはきわめて小さく,左右差の検討は困難であった.この単純反応課題では動作空間への注意配分が特に強くなくても課題遂行が可能だったと考えられ,選択反応課題による検討が必要と思われた. (2)90°頭部回旋の脊髄運動細胞興奮性への影響を検討するために,頭部回旋後14秒までのH反射を時間経過を追って観察した.その結果,H反射振幅は頭部回旋直後は安静時H反射の約150%にまで達するが,その後6〜7秒で安静レベルに収束していくことがわかった.したがって,動作空間操作のために用いる90°頭部回旋法では,回旋後6〜7秒間は回旋動作の影響が残るものと推察された。 大脳半球注意機能の関与について今後検討を進めていく予定である。
|