研究概要 |
本研究は、局所的運動に対する末梢循環系応答が、加齢に伴ってどのように変化するかを明らかにすることを目的としている。対象とした運動は、60秒間の静的および動的な掌握運動であり、運動時の血圧(Finapres)および上腕動脈血流量(超音波ドップラー)を測定した。 1、静的運動に対する応答:平均年齢22.3歳の女性7名と42.2歳の女性5名に最大筋力の10,30,50,70%の静的掌握運動を行わせて、運動時の心拍および血圧応答を比較した。静的運動の負荷強度が最大筋力(MVC)の10,30,50,70%と高くなるにつれて、両パラメータ共に上昇したが、中年では30%と50%の間、若年では50%と70%の間で急上昇を示した。また、高い強度では、運動による血圧および心拍数の増加量が若年者よりも中年者の方が大きかった。 2、動的運動に対する応答:年齢20歳の健康な成人女性9名に強度の異なる動的掌握運動を行わせて上腕動脈血流量を測定した結果、30%MVC付近で運動時の最大血流量の得られること、皮膚血流量の変化からみると上腕動脈血流量の変化は筋活動に伴う前腕筋への血流量を反映したものであることが示された。 3、60歳(5名)、40歳(5名)、20歳代女性(10名)の安静時、動的掌握運動中の最大値、運動終了直後の上腕動脈血流量は、いずれも3群間に有意差は見られなかった。しかし、運動中の収縮期血圧は年齢が高くなるにつれて高い値を示した。また、血管コンダクタンスは、20歳代と40歳代の間には顕著な差が見られなかったが、60歳代では有意に低下した。 4、以上の結果から、小筋群の運動誘発性最大血流量は中高年者でも若年者と同じレベルに維持されたが、高齢者ではそのために血圧上昇が顕著であり、血管コンダクタンスは高齢女性で低下することが明らかになった。
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