研究概要 |
高齢者の体力の検査法としては,筋力・持久力・柔軟性・協応生などの多くの検査項目があげられるが,最も重要なものは呼吸循環系を主とする全身持久力ということができる. 全身持久力の検査法として,実験室的にはトレッドミルや自転車エルゴメータを使用した運動負荷検査法が広く行われており,その中でも臨床医学的にはBruceのプロトコールが多用されている. 我々は,心臓病の回復期の患者24名を対象として,Bruceの運動耐容能検査を試み,ほとんどの者がstage II(Mets6〜7)を完了するという結果を得た.また,過去に一流の競技成績を示した65歳以上の女子選手50余名の体力の追跡検査を試みて,Bruceのstage III(Mets8〜10)もしくはstage IV(Mets13以上)の運動能力を現在も保持しているという成績を得ている. 一般の健康な高齢者は,この両者の間に相当する持久的体力を有するものと考えられ,座業者でBruceのstage II〜IIIを,活動的な高齢者でstage III(Mets10〜11)を越える成績をあげればよいと考えられる. 今回は,健康な男女の被検者6名(平均年齢67歳)を対象として,Bruce,Ellestad,Balke,Astrand等のプロトコールで最大下の運動を行わせて,先にあげた運動量に相当する負荷の条件を求めるとともに,各プロトコールの特徴を検討した.また,フィールドワークとして,トラックでの歩・走行,水泳プールでの歩行,ならびに各種の階段昇降運動を検査し,上の運動量とほぼ等価になるような運動条件を調べた.検査のパラメータには,心拍数,血圧値,心電図(呼気ガス)を調べ,可能な限り運動中および運動後の値を追跡した. 以上の結果から,高齢者の運動能力耐容能の検査法としては,臨床的にはBruce,Balkeのプロトコールが,フィールドワークとしては階段昇降運動がすぐれているとの結論を得た.
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