研究概要 |
運動機能に障害をもつ人々は障害に直接起因する機能低下のみならず,その障害ゆえに強いられる寡動な状態が二次的な疾患や廃用性の機能障害を誘発する。本研究の目的は,運動機能障害者の廃用がもたらす体力の低下を防ぎ,向上を図るために,運動の駆動力である筋機能を取り上げ,その評価と機能改善を追究することとした。特に,筋機能の指標として筋電図および筋力という情報に加え,第3の情報として筋の機械的活動を反映する「筋音」に注目し,筋電図→筋音→筋力という一連の変換過程の解析を通してこの課題にアプローチした。まず,本研究では筋音を記録するセンサーにチタン酸バリウムを用いた圧電型加速度センサーの導入を試み,さらに,その配置方法を検討し,その有用性を確認した。また,筋電図,筋音,筋力の同時測定を行ない,筋の電気的活動から機械的活動への一連の変換過程を推定できることを明らかにした。また,測定した筋音,筋電図に対して,スペクトル推定を中心とした数理解析を行った結果を検討し,筋機能に関する新しい評価方法,とりわけ,筋機能を筋線維タイプ別に評価しうる可能性が示唆された。次に,こうした筋電図,筋音,筋力の計測・処理法を活用し,実験的研究として,痙直型脳性麻痺患者を対象に,肘関節伸展動作を行った際の上腕二頭筋の最大筋力,次いで,最大筋力の50%まで様々な筋力レベルでの筋電図と筋音を記録,分析した。その結果から,脳性麻痺の運動機能障害は神経機能のみならず筋機能にも関連しており,特に筋機能では筋線維萎縮が存在することが推察された。また,この筋萎縮は速筋線維により進行していることも示唆された。
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