リゾート法の制定以来、日本各地で観光リゾート開発が積極的に計画されてきたが、バブル経済の崩壊によって、それらの計画は中止・縮小された場合が少なくない。 本年度は、1998年の長野五輪に向けて、高速交通網の整備が進みつつある長野県の戸隠村中社集落におけるう現地調査を実施した。戸隠村の観光は、バブル崩壊の影響を比較的受けずに順調に進展していたが、昨年の阪神大震災や昨夏の水害のために、ここに来て急激な減少傾向が生じている。名産の戸隠ソバを中心とする日帰り観光は比較的順調なものの避暑やスキーなどの滞在型宿泊客の落ち込みがいちじるしい。 一方、隣接する飯綱高原が会場のひとつとなる長野五輪についても、予想外に期待感はうすく、むしろ高速交通網の整備にともない、戸隠が通過観光地となってしまうことへの不安が高まっている。 このように、リゾート法の制定や、高速交通網の整備は、地方における観光リゾート開発を促進はしたものの、一方で類似した性格を有する観光地間の競合を生じさせ、安定的な観光地形成には必ずしも寄与していない。今後は滞在型の小規模リゾートを地域の内発的働きによって形成されることを援助していくような開発政策が要求されよう。 とりわけ、戸隠信仰を護持してきた戸隠村のような、伝統分化にもとづく歴史的景観を後世に伝えていくような地域づくりに積極的に取り組むべきであろう。
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