研究概要 |
本年度は、中国における低次中心地の機能を担う自由市場(集貿市場)の、(1)改革開放政策下での発展と、その全国的な分布状況、および(2)特に河南省鄭州市地域を採り上げての、その機能に関するインテンシブな検討とをおこなった。 その結果、まず自由市場の発展とその全国的な分布に関しては、(1)自由市場数及びそこでの売上高は1980年以来一貫して増大しつつあり、特に農村部の市場数は1990年で59,473にのぼり、G.W.Skinnerが社会主義革命直前の1948年に推定した市場中心地数58,000を回復するに至ったこと、(2)小売販売額に対する自由市場での売上高の割合は年々上昇を続けており、自由市場の相対的地位が高まりつつあること、(3)商品別の売上高構成では、自由市場が生鮮食料品市場としての性格を強めつつあること、(4)自由市場は、都市化地域と農村地域、先進地域と後進地域、沿海部と内陸部、北部と南部などの地理的条件の違いに対応しながら、さまざまな地域的差異を示しているが、都市化の程度と経済発展の程度が、その地域差を最もよく説明する要因であること、などが明らかになった。 一方、河南省鄭州市域に関する分析では、(1)自由市場が都市の市街地と近郊農村部とを問わず、人口数2万人に1つの割合で成立しており、住民の日用必需品、特に生鮮食料品の供給源として極めて重要な役割をはたしていること、(2)自由市場はまた、農村部出身の流動人口や都市部の失業・半失業人口に雇用の場を提供していること、(3)自由市場は鄭州市域やその周辺では、すでに多くが常設市化しており一部は隔日開催であるが、常設店舗の併存と共に、恒常的中心地としての性格を強めていること、などが明らかにされた。
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