研究概要 |
昨年度は広島県を事例として最近20〜30年間における地域的都市システムの構造変化を考察した結果,(1)広島大都市圏は大きく成長し,他地域との格差が拡大した.(2)県内中小都市間の水平的結合は発達しない.(3)欧米諸国と違って低次中心地は成長基盤が著しく弱いこと,が判明した.今年度の研究の第1は,広島市の企業支店調査である.この研究を行う動機となったのは,昨年度の研究に基づいて,大企業の支店と地方企業の本所の接合地点としての広域中心都市の役割を解明しようと考えたからである.広島市に立地する卸売業と事業所サービス業の支店にアンケートを配布し回答を得た約530社について分析した結果,(1)卸売業支店は主として高度経済成長期に立地したのに対して,事業所サービス業は1980年以後に進出している.(2)支店の管理領域は中国地方全域や西中国を主としており,1960年頃の卸売商圏に比べて支配圏がやや拡大したとみられる.(3)支店の人事交流においては本社のある東京・大阪との関係が強く,同格以上の都市との交流が多い.情報交換においてもよく似ているが,商取引においては管理領域内の主要都市との関係が強い.第2は,わが国主要都市における企業活動と都市システムとの関係の変化をみるために,1981〜91年の事業所統計から分析したものである.その結果,(1)主要都市の企業従業者の増加率は人口増加率と密接な関係をもっており,支店立地は地方都市経済においても重要な役割をもつ.(2)国土の縁辺部にある主要都市では3大都府県企業の支所従業者比率がやや低下するが,広域中心都市の企業が肩代りするため,地元企業の比率が高まる傾向は顕著とはいえない.(3)この10年間には広域中心都市よりも県庁都市の方が連結関係を強化しており,東京大都市圏の企業的成長率はやや衰えている.したがって,最近における東京大都市圏の転出超過への移行はこうした企業従業者の動向と無関係ではないように思われる.
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