研究課題/領域番号 |
06680151
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人文地理学
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
水嶋 一雄 日本大学, 文理学部, 教授 (00096918)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1995年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1994年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 環境保全型農業 / 有機農業 / 持続可能な村づくり / 特別栽培米 / 減農薬・減化学肥料 / 特別栽培米・特別表示米 |
研究概要 |
わが国における環境保全型農業(持続的農業)への本格的取り組みは、端緒に着いたばかりである。しかし、この農業の概念や考え方が必ずしも十分に規定されていないにもかかわらず、実践事例農家やグループは手探りな状態ながらも確実に増加しつつある。もちろん、いまだこの農業の一般的な考え方は、現在の農業で栽培・生産された農産物と差別化することで、有利な価格形成を狙うという販売戦略の視点は完全に抜け切れていなかった。ところが、最近になって生産者と消費者という枠だけでなく、国民全体のこの農業に対する意識の変化は、次第に農業・農村地域の豊かな自然環境を保護するという公共的意味と、安全な食料を栽培・生産するという社会的価値と役割を果たすという視点で捉え始めている。もちろん、環境保全型農業(持続的農業)に対する先進諸国の積極的な考え方の方向性の中で、わが国でも農林水産省や農協を中心に、この農業の概念規定を定めながら推進しようとしている。さらに、これらの機関では組織、制度、資金、法律などの基本的な条件を整備し対応しつつあるため、分布図でも明らかなように、この農業を実践する農家やグループは確実に増加しつつある。このような視点において、宮崎県綾町では豊かな照葉樹林と水資源の保護、健康で安全な農産物の栽培・生産を図るため、町によって自然生態系農業の推進に関する条例を定め、「手作りの里・綾町」をキャッチフレーズに持続可能な村づくりを実践している。新潟県笹神村では、有機肥料による土づくり、都市住民との交流などから、環境保全型農業を全村的あるいは組織的に推進し、豊かな自然環境の保護を主目的に「ゆうきの里」をキャッチフレーズとし、持続可能な村づくりに向けて積極的な活動を実践している。富山県では水稲・米の産地間競争が顕在化したことを受けて、販売戦略上から有機肥料の投入による特別栽培米・特別表示米を導入したが、長期的ならびに環境的視点による土づくり事業は、この農業の本格的導入・定着を意図している。 これらの事例から理解できるように、環境保全型農業(持続的農業)の定着と発展には、生産量の問題、技術的な問題など解決すべき点が山積している。地理学研究においても、この農業の定着と発展のメカニズムの解明は重要であり、FAOの報告書の分析方法を踏まえ、更なる事例研究の蓄積がおこなわれている。いずれにしても、もっとも重要な視点は基本的には自然環境の保護・保全を前提に、現在多くの問題を抱えている農業・農村地域を、この農業を通じて、どのように再構築しながら持続可能な発展を成し遂げるかである。
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