研究概要 |
日本における湖沼の水収支特性を明らかにし、その類型化を図ることを目的として,「涵養-流出」機構の差異に基づく湖沼の分類を行い,あわせて水収支に地下水が大きく寄与している湖の例に関し考察した。 1.わが国の湖沼総数663の中から,流出河川と流入河川の有無が判明している湖沼333を抽出し,各湖沼の水収支特性に基づく類型化を汎日本的な観点から試みた。対象湖沼の水収支型の特徴により,浸透湖・開放湖と汽水湖の3タイプに分類し,さらに浸透湖と開放湖については流入河川の有無によって細分類した上,位置と湖盆形態に関する一覧表を作成した結果,対象湖沼に占める浸透湖の割合は,数にして38.7%,湖盆容積にして24.0%となった。 2.各分類に属する湖沼の数,および湖盆容積の累加曲線から外挿法によって算出される容積の総量は次のとおりである。a.浸透湖:129ヶ所・10.88km^3(a-1.流入河川なし:107ヶ所・3.59km^3,a-2,流入河川あり;22ヶ所・7.29km^3),b.開放湖:177ヶ所・31.86km^3(b-1,流入河川なし;33ヶ所・0.07km^3,b-2,流入河川あり;144ヶ所・31.79km^3),c.汽水湖:27ヶ所・2.55km^3。総計:333ヶ所・45.29Km^3。 3.日本のような湿潤気候下に位置する浸透湖では,地下水漏出による湖水の消失によって水収支が成立しており,湖の流域外にみられる湧水の存在が特徴的である。これに対して火山地域の堰止め湖では,地形的分水界と地下水分水界とが一致しない例が多く,湖の涵養源として湖底への地下水湧出が大きな比率を占めている。 4.今後さらに本研究を展開させていく上の重要な課題として,各湖沼の流域を対象とした降水量・蒸発散量をメッシュ気候値を利用して算定すること,湿潤熱帯地域の湖沼,および湖面からの蒸発量が表面流出量を上回る乾燥地域の湖沼との比較検討を行うこと,があげられる。
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