研究概要 |
それぞれの教育現場での化学関連実験により排出する重金属実験廃液の処理,回収およびリサイクルを,中学校および高等学校おける環境教育教材として取り入れる可能性を検討した。学校教育現場の実情に沿って,銅,銀,アルミニウム,鉄,クロムおよびマンガンの関与する化学反応サイクルを作成し,それぞれの化学反応を化学反応教材あるいは環境教育教材として適宜使用することを提案した。中学校および高等学校における化学実験により生じる重金属廃液の適切な処理法とこの処理法を生徒実験に用いる場合の詳細な実験条件を示した。さらに,回収した重金属化合物を用いて,新たな化学実験教材を開発した。これらの実験教材は,教員養成を目的とした大学において,実験廃液の処理に関する基本的な知識と技術を養成するためにも有効である。 銅の関与する反応サイクルの作成においては,銅(II)化合物の水溶液とアルカリ水溶液との反応による塩基性銅(II)塩の沈殿反応に着目し,これらの反応を銅(II)イオンを含んだ実験廃液の処理や組成決定を目的とした実験教材に利用した。銀に関しては,中学校理科で取り扱うことができる化学反応を用い,反応サイクルを作成した。これらの反応は,熱分解および電気分解の実験材料として用いることもできる。アルミニウム缶の回収,再利用の社会的活動と関連し,回収したアルミニウム缶を用いたさまざまな化学実験教材を検討および開発し,学校現場でのアルミニウムの反応サイクルに取り入れた。また,環境中での鉄サビの生成反応に着目し,生成する水酸化酸化鉄(III)の結晶構造と環境条件の関係を調査により明らかにした。この結果は,酸性雨などの環境問題認識のための教材として用いることができること指摘した。また,鉄サビを出発物質とした化学反応教材サイクルを作成した。
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