研究概要 |
大学初年級の物理教育が抱える大きな課題の1つは,高校物理の未履修者への対応である。学生の物理履修歴は多様であり,物理の基礎学力と教科への興味・関心の持ち方のスペクトルも広い。昨今いわゆる「物理離れ」が顕著で,一般に物理への関心・興味はかつてほど高くない。本研究では,こうした学生への対応策として初年級の物理教育コースを工夫し,実践を行なった。まず物理教育コースの構成を基礎物理コースとアドバンストコースの2本立てとした。基礎物理コースは従来の体系に沿ったもので物理の基礎的な内容を対象とし,アドバンストコースは超伝導,素粒子,宇宙など現在話題となっている分野や,医用物理などの応用分野を主な対象とし,学生の興味・関心によって自主学習を行なえるコースとした。基礎物理コースにおいてはさまざまな学力を持つ学生に対応して物理学の講義を補助する目的で,コンピュータ支援の学習システムを一部開発した。このシステムは従来のテキストをハイパーテキストによる階層化し,学習分野の全体像を把握しやすくすると同時に学力に応じたきめ細かい対応を可能にしたものである。ここでは学習の理解を助ける補助情報や画像情報なども表示できるようにした。アドバンストコースでは,学生がデータベースを利用し,各自に必要なデータを検索し,目指す課題について調査・研究ができるようにした。データベースは学生が入手しやすい雑誌の文献情報を主な対象とした。さらにこのコースでは文献調査,抄録,キーワード付加などの情報処理作業や,研究,調査結果の発表会などいくつかの作業過程を体験できるようにプログラムを組んだ。受講者のアンケート調査では全体的に好意的な評価がみられた。一方,コンピュータ設備やマンパワーの問題,データベースの更新の問題など,解決すべき問題点も多い。
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