研究概要 |
本申請に関する研究では,マイクロ操作に基づいたプログラミングの実習指導が,高水準言語によるプログラムの理解を向上させるとの仮説を設定し,これを検証することを目的とする。そこで,次の作業を行った. (1)ソフトェアの開発: 既に開発したMOCSを基にして,それに高水準言語の命令の機能の教授や,低水準言語及びマイクロ操作との関連についての実習支援機能を拡張したシミュレータMOCSEIを開発した. (2)学習指導用教材の作成: 第1部:マイクロ操作・低水準言語,第2部:高水準言語と水準間の関連から構成した学習ノート「マイクロ操作に基づいたコンピュータ実習の手引」(B5判,140ページ)を作成した. (3)実験授業の実施と結果の概要: 学部学生を対象に,基本的な命令文(入力,出力,代入,IF-THEN文等)を含むプログラミングの実験授業を行った.実験授業では,MOCSEIを使用しかつマイクロ操作の実習を行う群,マイクロ操作を行わない群,MOCSEIの代わりにOHPを使用する群等を設定した.その結果, a.マイクロ操作に基づいて実習を行った群は,高水準言語の基本的な命令文に対応する低水準言語のプログラムの記述や,高水準言語の命令文の機能の記述の観点で,マイクロ操作を行わなかった群よりも優位であった. b.一つの高水準言語(ここでは,BASIC)について,命令文の実質的な意味や言語水準間の関連を学習させたところ,その他のPascalやCのプログラムについても読解や計算が可能となった. c.MOCSEIを用いた群は,OHPを使った群よりも,高水準言語の入・出力文の理解の点で優位であった.これらの結果から,高水準言語の基本的な命令文の理解に対して,マイクロ操作による実習の効果や,メディア(MOCSEI)による効果が認められた.従って,これらの観点では当初の予想は支持されたものと判断できる.
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