研究概要 |
本研究は,(1)初任教師の授業力量形成に関する研究の動向を明らかにする,(2)初任教師の授業力量形成過程を「面接調査」「質問紙調査」「授業分析」といった3つの方法を用いて実証的に検討する。(3)これらの研究成果をふまえて,初任者研修の内容・方法を改善するための手がかりをえる,という3つの目的をもって行われた。 その結果,(1)教職1年目は,教師にとって決定的に重要な年であるとともに,最大の危機に直面する時期(特に,夏休み前まで)である,(2)授業設計において,初任教師は,教科書会社の指導書に専ら依存しながらも少しずつ自分なりの考えを盛り込んだり,1時間レベルから単元レベルへ意識を拡大するといった成長がみられる,(3)授業実施においては,教科に応じた授業の進め方(指導法)や自分なりのスタイルが次第に確立されるといった成長がみられる。しかし,子どもの個人差や予想外の反応に対する対応は難しく,発達課題として残されてる。(4)授業と学級経営とをつなぐルーチンを確立することが重要な課題となっている。しかし,そのことにいつ気づくのかには教師間で個人差がある,(5)1学期は初任教師にとって「自信喪失の試練の時期」であり,「サバイバル期」である。このような時期には,校外研修を最小限にして,教室で子どもたちと生活・学習する時間をできるだけ多く確保してあげる必要がある,といったことなどがわかった。 したがって,これらの研究成果をふまえて,初任者研修の内容・方法を改善することが今後の課題として残されている。例えば,夏休みの学外研修では,各初任教師が1学期の自らの実践を振り返ることができるような演習や実習を取り入れることも検討されてよい。
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